東横線渋谷地下化工事

2013/3/29公開   トップ > 鉄道 > 現在地

2013年3月16日、東横線渋谷代官山間が地下化され、副都心線との直通運転が開始されました。

このページでは、その日の未明の、代官山駅附近で行われた地上線から地下線への切替工事の様子を御紹介します。

その前に、臨時終電と代行バス

「中目黒」表示の電車

終電から翌朝初電の間の工事時間を少しでも長くするため、この日に限り上り終電は中目黒止まりとなりました(そもそも上り終電までの数本は通常なら渋谷滞泊であるところ、折り返し回送で運び出しておかないといけないので、通常より更に工事時間が短くなる)。尚、この電車はこの場所で一夜を明かし、工事終了後の試運転列車として新線を初めて走る列車となりました。

あちこち走り回る行程の都合上この電車に乗ってる暇はなく、駅の外から無理矢理撮影した写真しかありません…

中目黒駅前で待機中の代行バス

中目黒から渋谷までは、代行バスが運行されました。当然東急バスで、目黒営業所1台、荏原営業所2台の陣容で、残念ながら特別に行先表示を用意した電車と違い「東急」表示でした。

バスの経路は、中目黒駅3番乗り場→山手通り→駒沢通り→(渋71の経路)→渋谷駅東口でした。こちらも工事見物を優先した結果乗っておらず、特に駅から離れた場所で乗降扱いをする代官山でICカードの入出場処理をどうするのか等気になる点はあったのですが、未確認です。

工事現場

渋谷1号踏切脇に貼られていた工事現場図面。ピンク色に塗られた道路が工事当夜通行止に

線路切り替えの工事は、

という3種類の作業が行われました。恐らくはこれらに正式名称があるのでしょうが、知らないしどこを調べれば書いてあるのか分からないので、この気の利かない表現で以下進めます。

尚、当日は工事現場周辺の道路は大々的に通行止になり、一般人は現場への接近が許されませんでした。

通行止エリアの外周を一周して、一番眺めのいい場所は代官山アドレスから線路へ延びる歩道橋の付け根(写真の現場図面で言うと、「代官山アドレス」の表記の「ス」の文字附近)と言う結論に達し、ここで4時間の見物をすることにしました。しかしこの位置からでは先に記した3種類のうち線路を切り下げる様子や、ホーム切り下げの様子が全く見えませんでした。

奥の左側のビルが代官山CAビル。屋上に大勢の人が

尚、線路南側に接する代官山CAビルの屋上が東急電鉄によって借用された上で屋上が関係者向けの見物場所になっていたようです。公式カメラマンの中井精也氏もこの屋上から写真を撮っていたそうです。ということはこの写真もよく見れば中井氏の姿があるのかも?

(愚痴)東急電車モニターなんだから、この工事の見学くらいさせてくれても良かったのに…。そもそも開通前にトンネル見学とかの機会があるものだと思ってたのに、全く期待外れ。むしろ工事酣の以前のモニターは現場見学があったみたいですが。

線路クレーン撤去

一番見栄えのする作業です。1:45頃から2:40頃まで行われました。

作業のためのクレーン車や、クレーンで撤去された線路を積載するトラックが周辺道路に待機する必要があるため、見物を阻害する大々的な通行止となっていたのです。それだけが理由かどうかは分かりませんが。

クレーンは線路北側(代官山アドレス側:私が見物していた側)に3台、反対側に1台の陣容でした。

線路吊り上げ中 線路吊り上げ中 線路吊り上げ中 線路吊り上げ中 2つの線路がそれぞれ吊られています 線路を積んだトラック 線路吊り上げ中 線路吊り上げ中 最後に線路脇の部材を撤去

線路持ち上げ

踏切とホームの間の、線路全体を持ち上げる工事です。「ジャッキアップ」と言えれば収まりがいいのですが、ジャッキを使って持ち上げるという方法ではないと思うので、そうは呼ばないことにします。

こちらは見ていて動きが分かるような速度ではないので、写真を並べてみてその差を比較するしかありません。最初のうちは上記の線路吊り上げに気を取られていてこちらの進捗に気付きませんでした。線路が上昇することで断面に予め用意されていた「東急電鉄・東急建設」の表示が見えたことで、こちらの作業の進捗に気付いて慌ててカメラを向けた次第です。

この部分は関係者専用特等席であるCAビルの真下になるので、そこからでは断面がせり上がる様子が見られなかった筈です。イソップ物語の狐ではありませんが、そう考えることで一般人の立場として溜飲を下げた思いです。

余談ですが、「東急電鉄(株)」と書いてありますが、(株)を付けるなら略称である東急電鉄表記は不適切ではないですかね…。

1:29。まだ持ち上げ作業開始前の筈です 1:47。まだ持ち上げ作業開始前の筈です 2:12。分かり辛いですが少し持ち上がりました 2:30 2:31 2:34 2:41 2:48 2:56。これで上がり切った?

架線付け替え

線路の切り下げが終わると架線の付け替えです。架線を一旦架線柱から外し、新しい高さに架線柱の梁を設置し、新しい梁に架線を留める、という手順ですが、架線を外す作業だけは、線路の撤去や持ち上げ作業の支障になるため、これに先駆けて行います。

作業中の視認性を向上するためだと思われますが、本工事前より吊架線に黄色いカバーが取り付けられていました。このお陰で、見物人としても暗闇の遠方からでもこれを視認することが容易でしたが、付け替え後の新しい架線はそうはなっていませんでした。

1:18。梯子を掛けて作業中。 1:41。架線が架線柱から外れています。 2:53。架線柱の梁の移設作業開始。白い梁を移動します。 3:12。梁を引き下げている最中。 3:20。所定位置まで下がったので締結作業。 3:45。梁が固定されたので架線設置作業開始。 3:55。一応架線が梁に取り付けられました。 4:19。架線の張りも出て、これで終了?

架線取り付け作業が難航したようで、一応取り付けるところまでは行ったのですが、その後何度も梯子を掛けては登って作業するということを繰り返していました。見た目の変化は分からなかったのですが、初電の時刻が迫っていることもあり、作業が手間取っていることは分かりました。

結局梯子が最終的に撤去されたのは4:50頃、そして試運転列車が入ってきたのは4:58でした。まず上りが入線し、駅で一旦停止してから付け替え区間に進入。暫くして下り列車が付け替え区間から駅に進入してきました。これらは東急5050系だったのですが、その後東京メトロ7000系の上り試運転列車が走行しました。動画にはそのうち最初の上下列車を収めています。

尚、動画にもありますが、下り試運転列車は停止位置不良だったようで、停止位置修正をしてから発車しました。

代官山駅の営業列車の始発は下りの5:02発ですが、4分遅れて5:06にやって来ました。僅かな遅れで気にするほどのことではないでしょうが、工事の最後のトラブルが尾を引く形になりました。

工事前後比較

切替後も朝7時頃までは周辺道路の通行止は継続され、当日翌日は所用があったため、工事後の様子を接近して眺めるのは1週間後の3/24になってからでした。

渋谷1号踏切から渋谷方向:切替前 渋谷1号踏切から渋谷方向:切替後

渋谷1号踏切からの新旧比較写真。同じアングルでない点はご容赦願います。渋谷方向は線路が錆びてるか錆びてないかの違いしかありませんが…。架線は画面一番手前の架線柱から手前は地上に引き下ろされています。

渋谷1号踏切から代官山方向:切替前 渋谷1号踏切から代官山方向:切替後

渋谷1号踏切から代官山方向。1週間経過すると、もう一部の軌道が撤去されていました。切替直後は「穴」になっている部分も線路があった筈です。

渋谷1号踏切跡地

尚、切替後は踏切道と線路の間は高さ2m程度のフェンスで仕切られているため、線路を撮影するにはカメラを持った手を上に伸ばして撮影せざるを得ません。

代官山ホーム上歩道橋から渋谷方向:切替前 代官山ホーム上歩道橋から渋谷方向:切替後

この部分の線路は裁断されてクレーンで吊り上げられた箇所です。切替前の写真で、切替後の高さのホームが見えていればいいのですが、この写真ではよく分かりません。

線路の下を走る電車とは何とも奇妙な光景です。

代官山ホーム上歩道橋から中目黒方向:切替前 代官山ホーム上歩道橋から中目黒方向:切替後

中目黒側は新旧で線路高さの差が段々小さくなりますが、それでも架線柱を見ると継ぎ足し金具で架線位置を切り下げた様子が分かります。

この部分は当日の様子が殆ど見えなかった、線路を直接切り下た箇所です。

おまけ:合わせて見納めの東横渋谷の奇景

3/14のNHKの朝のニュースで放映されていましたが、東急東横店には店と離れた着荷所からのれん街地下までを結ぶ「フローベヤ」と呼ばれる台車搬送システムがあります(私もこのニュースで存在を知りました)。東急東横店東館とのれん街が3/31限りで閉店(のれん街は閉店ではなく移転ですが)するのに伴い、この施設も消滅してしまいます。

着荷所は駅前の混雑を避けるために玉川通りのすぐ南側の区道が東横線(旧線)を潜る位置にあり、ここから玉川通りの地下を通ってのれん街の真下まで至ります。

フローベヤ対応台車。中央が連結ピン フローベヤにて動いている台車

一般人が立ち入ることは出来ませんが、着荷所を公道から覗くことは辛うじて可能で、遊園地のアトラクションの乗り場を眺めている感じで様子を窺うことが出来ます。

サンフランシスコのケーブルカーを連想させるシステムで、ルート上には往復でループになるように溝が切ってあり、溝の中をチェーン(?)が動いています。専用台車を溝を跨ぐように置き、台車に付いているピンを溝の中に降ろすことで、台車がチェーンに引っ張られて動くという仕組みです。

動画は2つ撮影しました。2つ目の動画は台車を嵌める様子が多少分かり易いかと思います。

さて、フローベヤに比べれば珍しくも何ともないのですが、東横線旧線の真下で玉川通りを横断する地下道があります。

玉川通り横断地下道入り口(南側)

そもそも高架下にあって目立たない上に非常に陰気なので存在を知らない人や知っていても近寄ろうとしない人が多く、人通りの多い渋谷駅前にあって、通行人を見掛けることはあまりありません。

何が珍しいかと言うと、公道を横断する施設であり、しかも両端とも公道に接続しているのに、管理者が東急東横店であるという点。

この地下道は上記のフローベヤの隣あたりに位置している筈ですので、恐らくはフローベヤ、と言うよりも着荷所から店舗までの搬送通路を一民間企業が天下の公道を横断する形で整備するに当たり、公共の利便に資する施設を合わせて設置することでその許可を得たのではないかと思います。

南側入口階段 道路横断部

この地下通路もフローベヤの後を追うように、4/7限りで閉鎖となります。副都心線渋谷駅の14番出入口と新しく整備された16番出入口を使えば代替になる、という考えかも知れませんが、深過ぎるので道路横断だけのためには不便、それなら歩道橋を使う、ということになると思うので、結局ただの廃止でしかありません。搬送通路を廃止するのだから抱き合わせの公共通路を維持する理由がなくなった、というところが正直なところでしょう。

でも、先に述べたような状況で利用者は僅少なので、迷惑する人は少ないから問題無いのでしょうけど…。

そして、この閉鎖の告知は東急電鉄名で出されています。管理者と一致してない点もまた変わってます。

トップ > 鉄道 > 現在地